・・・『実録 連合赤軍 あさま山荘への道程』の話の続き。
映画HPで各界のみなさんが寄せているコメントは、
http://wakamatsukoji.org/
四方田犬彦を除けば、かなり感傷的に走り過ぎて俺にはピンとこない。
そもそも俺には連合赤軍についての思い入れが決定的に欠けている。
にもかかわらず「非常に面白く見ることができた」というのはナゼか。
この映画について語るなら、まずその疾走感について触れるべきじゃないだろうか。いちばんイキのよかった時代のヤクザ映画のテンション。それが青春映画に転調し、そのうちどこからか不穏な雰囲気が流れ始め、いつの間にかサイコサスペンスのクレッシェンドにつぐクレッシェンド、ついには精神的拷問のようなゴアゴア悪夢展開・・・で、最後にきて怒涛のクライムアクションによるカタルシス。うまい。うますぎる。
・・・この映画は非常にあぶないところを走っている。よく特攻隊映画であるじゃない?「彼らはみな純粋に、愛する人のためを思って旅立っていった」とか「その崇高な精神は否定されてはならない」とか・・・。「やってることはダメダメでも、ココロザシが崇高ならええじゃないか」というロジック。ええのんか、それで。ぶっちゃけ特攻という「外道」の戦法を止めることができなかったのが、大日本帝国の最大のダメさだと思う。そんなんで戦争に勝てるか。
・・・ちょっと間違えば、この映画だってそんな「特攻映画」ふうになるところだった。
そうはならなかったのは、やはり最後の10分間あたりの、あの気まずいシーンがあるからだ。あれはまさに連合赤軍に対する見事な「総括」だった。
同時に、あのシーンがあったからこそ、この映画は普遍性を持ったテーマを提示することになった。つまり、「あなたも彼らと同じように、組織や関係の中で、大義名分の陰にかくれて、誰かを見殺しにしてきたのではないか?」という問いを。
・・・ところでこの映画は、映画的リズムを大事にするためか、意図的にある要素を排除している。それは主人公たちの思想的背景に関するディティールだ。この映画だけ見ていると、基礎知識のない人には、「いったいこの人たちは何を考えているのか」というのが全然わからないことになる。「共産主義」「共産主義」ゆってるけど共産主義にもいろいろあって、「どの共産主義?」ってことがぜんぜん見えない。映画としてはそれで全然かまわないのだろうけれど、もうちょっとディティールがほしいな、と俺は思った。
▼『毛沢東盲従の末路―「連合赤軍」事件の根源をつく』
>http://maoist.web.fc2.com/jcp/jcr000.htm
日本共産党中央委員会出版局発行(1972/5/1)
・・・これは事件当時に日本共産党が出したパンフレットなのだけれど、なかなか面白いことが書いてある。前にも書いたけど、中国共産党は日本共産党に対して「武力闘争」方針を要求し、日本共産党は「自主独立」「議会主義」の立場からそれを蹴ったことがある。まー第一に、発達した資本主義国での「武力闘争」なんてのが非現実的だったからだけど、おかげで日本共産党は1966年以降、中国政府から「『四つの敵』の一つ」とまでみなされていた。
(中国共産党の『四つの敵』論=アメリカ帝国主義、日本反動派、ソ連共産党、日本共産党の四つを打倒せよ、というもの)
・・・そんなわけで日本共産党としても「鉄砲から権力が生まれる」式の「毛沢東主義」は批判すべき対象となっていたんだが、上記資料はそういう視点から「連合赤軍=毛沢東主義への追従者」として分析したものだ。もちろん今から見れば不十分さや不正確さも指摘できるだろうけれども、大筋ではハズしてないんじゃないかと、読んでみて思う。
・・・思うに、戦争や革命についての著作というのは、やはり若いうちにちゃんと読んでおかないとダメなんじゃないかな。ひとくくりに「トロツキズム学生組織」と呼ばれた青年たちにしても、「彼ら本当にトロツキーとかレーニンとか読んでたのかなー?」と思うことがよくある。「本当に読んでたら、こうもダメにはならんだろう」と。
1930年代の中国なら「鉄砲から権力」も生まれただろうし毛沢東も英雄だったろうが、1970年代の日本において同じことをやっても成功するわきゃーない。それに、本当に毛沢東に学ぶなら、「人民からの略奪」は禁じなきゃ・・・(@∀@)
過去のある成功事例は、特定の背景状況のもとで成功が可能になっているのであって、別の状況下で同じことをやっても同じ成果は得られない。やはり教養とか学問とかいうのは大事だよ・・・
ところでトロツキーといえば新訳が出ているね。
- 作者: トロツキー,森田成也
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/04/10
- メディア: 文庫
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佐藤優も言ってるが、「支持するとかしないとかは関係なく、読んでおくべき本」というものが世の中には確かにあって、これもその一つだ。『聖書』とかもなw
・・・誰が訳してるのかなー・・・と思ったら、あんたかよ!(@∀@)
こうして知り合いが本を出すと「あー俺も負けてらんねー」と思うよね。