- 作者: 池上永一
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/08/28
- メディア: 単行本
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・・・風呂で本を読むのが好きで、必然的に長湯になる。面白い本だとお湯がどんどん冷めるのだが、この本では冷めまくり状態。ハードカバー上下そろって3200円もするからムシャクシャして上巻だけ買ってやった。本なら何でもよかった。今は後悔している(@∀@)下巻も買うべきであったと。
大国の隙間で翻弄される琉球王国、そこで知略をつくして祖国の生き残りを図る官僚が主人公、それが宦官のふりをした美しい天才少女で、・・・とくれば萌え要素満載かと思うでしょ。ところが実はそうでもない。まるで現代訳された古典文学のような、突き放した視点からの描写。それでいて流転する主人公の過酷な運命から目が離せない。「過酷」というのはウソではなく、あっと驚く鬱展開も淡々とやってくる。読者であるおれはどうしたらいいんだ(@∀@)とかついつい思っちゃう。コントローラーがあればAボタン連打で助けてやれるのに!
たとえば古今ミゾウユウwの巨大台風、それが無数の人命をすりつぶしながら海を渡ってゆくとしても、それは地上を見下ろす天の目から見れば「地表で変化していく模様」にすぎない。この物語の観測点はまるでそのようなところにおかれているかのようで、主人公達を襲うあまりにひどい運命の数々も、さばさばと描き去ってゆく。だがしかし、風に抗う小さな草花にも生き延びるための「戦略」がある、そしてそれはけっこう面白い!ということをこの物語は描き出す。この話の真の主役とは、実は「生き延びるための弱者の戦略」そのものではないのだろうか。そう思わないと、主人公の「かわいそうさ」の説明がつかん!(@∀@)
・・・奥付をみたら作者はファンタジー小説大賞の受賞者だった。だからどうだというわけではありませんが、酒見『後宮小説』賢一や鈴木『リング』光司などを思い起こし、なんとなく「匂い」が同じような気がしたりして。