21世紀に、まさかの復活!狂ったアストロ特攻隊マンガ『ゼロ戦岬』
・・・石原慎太郎の特攻映画(自爆映画?)の公開を前に、便乗本の出版が相次いでいるが、
これなどはその最たるものだろう。
しかし、この本は他の便乗本と少々違う。
このマンガアンソロジーの編集者は匿名ではあるが(「戦史コミック制作委員会」名義)、城山三郎の『指揮官たちの特攻』について触れている。城山も17歳で特攻に志願して、しかしその現実に「裏切られた」体験を持っており、そこから『指揮官たちの特攻』を執筆する動機も生まれたという。この生前の城山に、本書の編集者は偶然にも遭遇し、「よい本をお作りなさい」という言葉をかけられたことがあるそうだ。このたび、城山の訃報を聞き、彼らは「自分たちで特攻についての本を作ろう」と考えた。
・・・それで作ったのがこの本だが、よりによって 中島徳博(『アストロ球団』)の『ゼロ戦岬』をセレクトするというすばらしいセンス。
また、水木しげるや初期のかわぐちかいじやバロン吉元といったトラウマ系の人選。すばらしい。まるで「ほるぷ平和漫画シリーズ」だ・・・と思ったら、やはり巻末に同シリーズへの言及があった。
・・・実は以前にもこのブログで『ゼロ戦岬』を紹介したことがあったが、ぜひ現物を目にしていただきたいのでリンクは貼らない。
言っておくが『ゼロ戦岬』というマンガはフィクションもいいところである。このような事実はありません。しかしながら、「大日本帝国の戦争」、なかでも「特攻」という理不尽なシステムを、これほどの熱量をもって描いたマンガは稀有な存在だと思う。これが1976年に『少年ジャンプ』に掲載された時の衝撃は今も忘れない。
・・・なお、宙(おおぞら)出版は、この本のような400ページを超える戦記マンガを今後も出す予定らしい。その第2弾が横山まさみちの『ああ硫黄島/人間魚雷回天』だというところが、いかにもやる気まんまんな感じだ(@∀@)
また、野坂昭如の『怨歌劇場』(『火垂るの墓』などを滝田ゆうが漫画化したもの)などを含めた、「漢(おとこ)文庫シリーズ」も展開するという。しばらくは宙出版から目が離せない。