最近なくなった、茨木のり子さんの詩。
・・・この詩にはじめて触れたのは、たしかテレビで・・・ああアレは誰だったろう?これをフォークソングにして、女性シンガーがギターで歌っていたのだ。しかしいまだに誰だか特定できないでいる。というのも、実はこの詩を歌にしたのは一人や二人ではないから(※)。
にもかかわらず、そのメロディと詩だけは記憶から消えないのである。
(※)最近だと沢知恵とか。
http://www.excite.co.jp/music/song/4543662000231/
▼わたしが一番 きれいだったとき
茨木のり子
わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした
わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達が沢山死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった
わたしが一番きれいだったとき
だれもやさしい贈り物を捧げてはくれなかった
男たちは挙手の礼しか知らなくて
きれいな眼差しだけを残し皆発っていった
わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った
わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた
わたしが一番きれいだったとき
ラジオからはジャズが流れた
禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
わたしは異国の甘い音楽をむさぼった
わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった
だから決めた できれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を書いた
フランスのルオー爺さんのように
ね
▼茨木のり子が語る茨木のり子
http://www.sakamura-lab.org/tachibana/hatachi/ibaragi.html
▼ピート・シーガーがこの詩を歌にしていた。
http://plaza.rakuten.co.jp/gensenkan/diary/200309290000/