特攻を拒否しぬく人間がいなかったのはなぜなのか
- 作者: 鈴木光司
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/10/30
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
・・・まだ読みかけなので詳しいことは書けない。しかし面白い。しょっぱなからトバす展開で予断をゆるさない。
雑誌などで読んだところでは、鈴木光司は、「太平洋戦争当時、なぜ特攻を拒否しぬく人間がいなかったのか」という疑問をもとにこの小説を書いたという。「みんながそうするとしても、自分は納得できない」と主張し、行動する人間がいなかったのはなぜか、と。これは現在においてもよくあることで、だからこそ「激しい流れに逆らう人間」をテーマに小説を書いたのである、とのことだ。
・・・特攻作戦に関しては、「日本(大日本帝国)の国を守る」という名目ではあるが、実のところは昭和天皇に対する政治的メッセージとして実行された、という話がある。
http://tizu.cocolog-nifty.com/heiwa/2007/06/259_d962.html
具体的には、こんな感じだ。
▼海軍第一航空艦隊司令長官・大西滝次郎中将の発言
(角田和男著『修羅の翼』より)
>これは、九分九厘成功の見込みはない、これが成功すると思うほど大西は馬鹿ではない。では何故見込みのないのにこのような強行をするのか、ここに信じてよいことが二つある。
>一つは万世一系仁慈をもって国を統治され給う天皇陛下は、このことを聞かれたならば、必ず戦争を止めろ、と仰せられるであろうこと。
>二つはその結果が仮に、いかなる形の講和になろうとも、日本民族が将に亡びんとする時に当たって、身をもってこれを防いだ若者たちがいた、という事実と、これをお聞きになって陛下御自らの御仁心によって戦さを止めさせられたという歴史の残る限り、五百年後、千年後の世に必ずや日本民族は再興するであろう、ということである。
・・・こんな無残な戦い方をするほど追い詰められてるんだから、そろそろ終戦にしましょうよ、陛下がソレ言い出してくださいよ、あたしらが言い出すとすぐ反日「非国民」とか言い出す連中がいて危険がヤバいんですよ・・・というわけだ。
もっとも、空気を読めないか読みすぎたのか知らないが、昭和天皇は「じゃ、ヤメようか」とは言わなかった。
▼吉橋戎三著『侍従武官日記』、昭和19年10月25日
(「及川軍令部総長から特攻隊の戦果報告を受けて)
>体当リ機ノコトヲ申上タル処 御上ハ思ワス 最敬礼ヲ遊ハサレ 電気ニ打タレタル如キ感激ヲ覚ユ 尚戦果ヲ申上ケタルニ 『ヨクヤツタナア』ト御嘉賞遊サル 日々宏無辺ノ御聖徳ヲ拝シ 忠誠心愈々募ル
そもそも昭和天皇に「戦争をこのへんでやめる」という発想がなかったことを、大西は知らなかったのか。
http://www.fben.jp/bookcolumn/2007/04/post_1412.html
・・・特攻は続けられ、負け戦はとまらなかった。
さて、小説の方であるが、読み終えるにはしばらくかかりそうだ。評価は読後に行いたい。