困っているときに「困ってます、助けてください」と言える人間は正しい。
・・・赤木智弘氏という人の言うことは、俺から見ると「なんでそんな、いまさら言ってもせんないことを今言うの?」と思える時もあるが、それでも彼がそれをあえて言うことで、「何かちょっと俺の考えてなかった盲点が見える気がしないでもない」と、そんな風に思うことがある。そういう意味で、俺は赤木氏を「言論界の碇シンジみたいな人」だと思っている。
・・・たとえばロスジェネ別冊で、
ロスジェネ 別冊 2008―超左翼マガジン 秋葉原無差別テロ事件「敵」は誰だったのか?
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赤木氏はこういうことをいう。働いても働いても貧しいフリーターに対して「がんばれ」と言っても限界がある。彼はいくらがんばってもその状態から抜け出せなくて、時給が10円か20円か上がるばかりだ。そこで「他人の力」がほんの少しでもあれば、「ほかの可能性にずらす」ことができて、苦境も解消できるかもしれないのだが、と。確かにそのとおりだ。もしも自分の努力でなんとかできる人ならフリーターはそこにはいないはずだろう。
そこから出られないでもがいている人に、橋下くそ府知事のように「自己責任だ。努力せよ。そうすれば成功する」と言い放つのは、本当に愚か者のすることだ。そうではなくて、具体的な助言、具体的なカネ、具体的な指針などを差し出さねばならないのだが。
今でこそ俺は毎日楽しく仕事をしているが、たしかに俺が就職するにあたっては無数の助力をたくさんの他人から受けている。俺を不採用にした人事担当者からでさえ、「使える人生のネタ」をたくさんもらった。(まーハドソンの採用に落ちたのは非常に残念だったがw)そういうのも含めて俺の人生は「他人の力」で出来ているし、逆に俺が誰かを助けていることもあるわけだ。赤木氏も『論座』の編集さんから声をかけられてライターへの道をつかんだ。人間は一人では生きていないし、他力を得て生かされているにすぎず、それは不完全な人間という存在にとっては全く正しいありかたなのだが、そんな当たり前の社会の姿を、橋下くそ府知事のような「自己責任」厨は否定する。その結果は何かといえば、たとえばアメリカのような「病気」の社会であり、
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そしてまた、「どんなに困っていても、他人に『ぼくを助けてよ』『ぼくを大事にしてよ』と言えない、絶望的に孤立した人間の群れ」だ。秋葉原や難波のビデオルームでどんな事態が引き起こされたかを思い出すべきだろう。彼らがもし「助けて」といえたなら、そして誰かの「小さいが、適切な」助力があったならば、救える命もあったはずなのに。彼らは自分の苦境を「自己責任」だと思い込んでいた。「じぶんでなんとかしなければ」と思い込んでいたのだ。それはできないことなのに・・・。
「自己責任」論は危険だ。それは社会を決定的に不安定化するだろう。
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