▼SPA!特集「極貧ワーキングプア正社員の悲鳴がおさまらない!」
http://spa.fusosha.co.jp/weekly/ent_6881.php
>ところが、今や正社員の生活だってひどいことになっているんです。例えば、生活保護(住宅扶助含む・東京都区部在住の場合)の扶助基準は、一人暮らし(20〜40歳)で月額13万7400円、標準的3人世帯(33歳・29歳・4歳)で月額23万4980円(いずれも手取り)となります。平成19年就業構造基本調査によると、正社員の3割にあたる1085万人が年収300万円未満という結果が……。もはや、「正社員」対「非正社員」という構図で、格差社会を語るのは無意味なことになってきているのかもしれません。
>そこで今回は、年収300万円以下で、名ばかり管理職やサービス残業、パワハラ、地域格差などに苦しむ正社員の悲痛な声に耳を傾けてみました。
・・・この特集を見ると、正社員の約3分の1は年間200万円台の所得しか得ていない。(総務庁統計局08年7月統計)手取りがほとんど生活保護レベルで家族を養う人々もいる。SPA!のアンケートでは正社員の8割以上が「自分の生活は貧しい」「正社員が勝ち組なんて思えない」と答えている。健保・社保などの福利厚生のない会社、名ばかり管理職で残業代も出ない、子供を高校にもやれるかどうか・・・等々。
反貧困ネットワークの湯浅誠氏の話も載っている。なぜフランスの労働者は企業に強く出られるのかといえば、「労働市場の外で生きられる確率が日本より高い」=社会保障、地域コミュニティ、強い労働組合があるから・・・と。そうしたものがないと、労働者は企業にすがって生きるしかなくなる。逆に言えば、そうした「労働市場の外」を創造することにこそ、貧困から抜け出すための光明もあるのだろう。くわしくはこの映画を見よう。
- 出版社/メーカー: ギャガ・コミュニケーションズ
- 発売日: 2008/04/04
- メディア: DVD
- 購入: 2人 クリック: 86回
- この商品を含むブログ (134件) を見る
・・・ところで「正社員対非正社員」というしょうもない図式は、たとえば赤木智弘氏が提唱していたが、まあとんでもない話でね(@∀@)正社員にかみつく非正社員をニヤニヤしながら見ている大企業経営者が大喜びしそうなトンデモ世界観だと思う。非正社員の増加は、正社員の労働条件を切り下げるために利用されるというのに・・・。
↑上記傍線部についてですが、赤木氏より「ちがうよ」とのコメントがあったので、一時凍結・保留します。のちほど「いや、やっぱりそう言ってるじゃん」と判断すれば解除しますし、「間違えました」ということになれば訂正します。(九郎政宗 0810010624)
私が赤木氏の主張に「正社員vs非正社員」という構図が含まれてるのではないか、という印象を受けたのは『ロスジェネvol.1』の対談での「パイが限られている」(p.13)発言だったのですよ。もうね、正直うんざりなんです「パイが限られている」論。なんでパイの大きさが「所与の条件」になってんのかと。それ前提にしてしまうと「パイの奪い合い」も不可避になってしまう。もう一個パイを持ってくる知恵はないのんかと。
ですが「ちがうよ」ということなので、もうちょっとテキストを読み直してみます。(九郎政宗 0810010715)
そういう「対立させるべきものでないものを対立させて描く図式」、これを無意味化するという点でも、上記記事には意味がある。
さて、こうした論調を見るにつけ、俺が思い出すのは「カムイ伝」である。
- 作者: 白土三平
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/05/15
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 7回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
・・・文庫のほうが場所をとらないが、でかい紙面で見るならこっちだ。
「カムイ伝」は、武士や百姓から差別される非人部落で生まれた少年カムイが、貧困や差別から逃れるために忍者になるものの、そこでも階級差の苦しみがあることを知り、「抜け忍」となっていく物語のはずだった。実際、これはすさまじい迫力の忍者漫画である。戦闘における人体の損傷度は「エルフェンリート」以上だ。しかしそれは一面にすぎない。
物語の途中から、カムイの活動と平行して、「農民として生産力を拡大し、身分差別のない社会を実現していこう」とする百姓・正助の話が拡大を始める。本来は対立すべきではない百姓と非人は、協力して武士の支配を無効化すべきだ、と彼は考える。
もちろん武士の側も黙ってはいない。およそ考えられる限りの卑劣な手段をもって、正助の活動は妨害され、非人と百姓は分断されて支配される。農民だから農民の味方とは限らない。そして武士たちもまた一枚岩ではない。商人もまた独自の利害をもって着々と勢力を伸ばす。「平均すると月に一度は一揆が起きていた」という江戸時代、それは眠ったような穏やかな時代などではなかった。
どうなるカムイ。どう戦う正助。この漫画は読み出すと止まらない。
そしてカムイがたどり着く、身分制度の根幹をゆるがす江戸幕府の秘密とは。
・・・こういう本って意外に漫画喫茶にはおいてないんだよね。
むしろ図書館とかブックオフを探したほうがいいんじゃないかと思う。