すべての虚構の、現実に対する敗北

・・・秋葉原無差別殺人事件について、おれはいま、激しい悔しさを感じている。
これは「すべての虚構の、現実に対する敗北」だ。
もしも今が2008年でなく1995年なら、この事件の容疑者は無差別殺人など起こさなかったにちがいない。そんなことをしたら来週の『新世紀エヴァンゲリオン』がテレビで見られないからだ。
また、もしこれが1996年なら、この事件の容疑者は無差別殺人など起こさなかったにちがいない。そんなことをしたら『スラムダンク』の最終回が発売日に読めないからだ。
そしてまた、もしこれが『TH2』の発売日直前だったなら（以下略）
だがしかし。
今回の事件で、すべてのマンガやアニメやゲームや映画は、現実の前に敗北した。事件の容疑者に無差別殺人を思いとどまらせるほど面白い虚構は、一つも存在しなかった。
俺はそれが死ぬほど悔しい。山田玲司も同じ気持ちではないだろうか。彼のクスリは、絶望に対してあまりに無力だ。（最上級の敬意を込めて、しかし書かなければならない）

▼絶望に効くクスリ
http://www.youngsunday.com/rensai/comics/one_on_one.html

・・・今回の敗北者は、マンガ・アニメ・映画などの虚構のほかに、もうひとつある。
２ちゃんねるだ。

▼秋葉原無差別殺人の容疑者は、ロリコン、二次元しか興味なし、いつも２ちゃんねるチェック、しかもコテハン
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/dqnplus/1213019442/
＞いつも携帯片手に掲示板「２ちゃんねる」をチェック。自らのハンドルネームを持ち、頻繁に書き込みを行っていたようだ。
＞http://www.zakzak.co.jp/top/2008_06/t2008060923_all.html
＞http://www.zakzak.co.jp/top/2008_06/image/t20080609236KTakiba01.jpg

・・・世界最大の巨大掲示板でありながら、無差別殺人のひとつも止められないとは情けない。俺も含めて、すべての２ちゃんねる利用者は、現実に対して敗北したと言わざるをえない。
容疑者はなんども自分の状況を掲示板に書いている。もちろん誰かに自分を止めてもらいたいからだ。
彼に「友達になろう」と書いた人もあった。本当によくやったと思う。彼女こそ「希望」の名にふさわしい。しかしもちろん、そうでない者もいた。結果として２ちゃんねるは、今回の事件を止められなかった。俺はそのことを情けなく思う。

▼救護した人に血液検査呼びかけ　警視庁「感染の恐れ」
http://www.asahi.com/national/update/0610/TKY200806100105.html
＞警視庁は１０日、事件の被害者の救護にかかわった人に、Ｂ型肝炎感染のおそれがあるとして、万世橋署（０３・３２５７・０１１０）に速やかに連絡するよう呼びかけた。被害者の１人がＢ型肝炎のためで、医療機関で血液検査をする必要があるとしている。