▼わしズム 最新号
http://www.s-book.com/plsql/com2_magcode?sha=1&sho=2300708106&type=s&keitai=80
・・・こうの史代の新作『古い女』が掲載されています。
あと、愛国ネチズンは必読の特集がいろいろと(@∀@)
『古い女』というのは実にイヤなマンガです。ですが読者に砂糖菓子ばかり
食らわせるようなマンガばかりじゃ、読者も嫌気がするのです。たまに
イヤなマンガを読むのも健康のためにはよろしいと思います。
さてこのマンガのイヤさについてですが、たとえば手塚治虫のアシスト出身の
石坂啓さんが週刊ヤングジャンプで描いていた『安穏族』にも通じるものが
あるように思います。ただ石坂さんのばあい、あまりにも「手塚の子」で
ありすぎたために、そのイヤさが肉体的なリアリティを持つところまでは
到達せず、その宙ぶらりんさが更にイヤという、結局イヤなのかそうでないのか
はっきりしないイヤなマンガだったのですが・・・いや、もうやめとこう。
これでも私はあの作品群をそれなりに評価しているのですから。
そんなことより『古い女』です。
この作品はおそらく多くの人を傷つけるでしょう。戦争を知らないのに戦争を
待ち望む人々を傷つけるでしょう。あるいは「靖国の母」を潜在的に傷つける
かもしれません。まーたぶん彼女たちはマンガを読まないし、読んでも理解
できないでしょうけれど、いずれにせよこの作品は人を傷つけるでしょう。
というのもこの作品が真実を語っているからで、真実はたいてい人を傷つける
ものだからです。
つまるところ、人が自分の人生や家族を本当に愛していて、フル回転で
生きている限り、国家が身勝手にもやらかす戦争などに協力しているヒマ、
あるいは「戦争」を夢見ているヒマなどはどこにもないのであって、
にもかかわらず「戦争」を、すべてチャラにしてくれる「戦争」を待ち焦がれて
いるアナタはいったいナニをやってんだか、という身も蓋もない話。
「死ぬまでやってろ」というのは私の好きな捨て台詞ですが、ほんとに死ぬまで
「自分という檻」から出ることができないと思い込み、絶望しながら生きていく
人間像というのは想像するだに恐ろしい。しかもそれがカラーで「チラシの裏」に
描かれているという入れ子構造は絶叫したくなるほど怖いと思いました。
ところで「チラシ」はCG処理な気がします。デザイナーさんがいるのでは
ないでしょうか。非常にイヤな感じで、実によろしいと思います。
この主人公は「もしかしたらありえたかもしれない、もう一人のこうのさん」
なのではないかと思いましたが、そう思わせるのも腕のうち、なのかも
しれません。しかし誰しも自らの人生をダメにしてゆく可能性というのは
持っているものではないかと思います。つまりふつうの人生こそが実は
最も過酷な戦いなのであって、本当に「戦争」などで時間を無駄づかいしている
ヒマはないのにね。
追伸
その後、あの漫画は本当にチラシの裏に描いたのだということが、こうのさん本人の掲示板書き込みにより判明。まったく、本当に恐ろしいマンガです。(@∀@)(絶叫)