▼「素直さ」がはらむ問いかけ
朝日新聞 2005年9月25日 朝刊15面
＞知識人と呼ばれる人々はたいてい、ベストセラーがお嫌いである。たまに読んでも、まずほとんどが、
「（いやいやながら）読んではみたがなにほどの内容もない。なんで大衆はこんなレベルの低いもの
を喜ぶのか」というようなお叱りがほとんどである。…しかし、これはベストセラーの本質をわかってい
ない言である。ベストセラーがベストセラーたり得ているのは、内容ではなく、社会の基層に蔓延した
”感情”をすくいあげていることが、大抵の場合その理由だからである。オイルショックによる社会不安
が『ノストラダムスの大予言』をベストセラーにし、団塊の世代を中心とした中高年層の老いへのあせり
が渡辺淳一の不倫小説をベストセラーにする。これらはその時点々々での日本の大多数の国民感情
を映した鏡なのである。
・・・ここまででかなり萎え(＠д＠;)
「知識人と呼ばれる人々」って誰なんだろう。なんで具体的な名前を出せないんだろう。まさか東浩紀のことかなあ？（＠∀＠）いやそれはナイか・・・ていうか今どき「知識人」言うかあー？
それに、『マンガ嫌韓流』を「素直さ」という言葉で表現するあたり、どうもこの人は「読まずに批評」している可能性がある。少なくともあの本の大月コラムを読んでいれば、こんな書評は恥ずかしくて書けないような気がするのだが。
＞その意味で、最近話題の『マンガ嫌韓流』を取り上げる際には、その内容の分析よりも、こういう本が
ベストセラーになるまでに、日本社会の中に嫌韓流という感情が広まっている、という事実を確認する
ための検証の視点が大事になる。すでに発売当初において、同じ嫌韓流の人々たちからも、「ネットで
流通している情報をまとめただけで新味はない」「構成、作画などマンガとして見れば決して出来はよく
ない」という批評がなされているのを今さらなぞっても仕方ない。
・・・あのう、朝鮮・韓国人への差別感情なら、昔から日本にありましたけど・・・それこそ明治時代から。まさかご存じないはずもないけれど。
ワールドカップやテレビ・映画の「韓流」ブームなどによって、そういうものが少しは無効化されてきたところではないのだろうか。
http://pweb.cc.sophia.ac.jp/~s-chong/
・・・それに、嫌韓流の内容そのものについても、高校生に虚偽を指摘されるレベルの誤情報や、民族差別主義的な偏見が満載なのに、
http://wiki.fdiary.net/rir6/?%C3%A6%A1%A6%A5%DE%A5%F3%A5%AC%B7%F9%B4%DA%CE%AE
それについては触れもせずと。それでいいんですかトリビアー(いま作った造語)唐沢センセイ。
・・・トリビアといえば、ネット版の『嫌韓流』では、日本での参政権を求める在日コリアンを「外国のスパイ」よばわりしていたのに、書籍になるとこのセリフは書き換えられています。これはいったいなぜなんでしょうか？素直に思ったままを書けばいいのに（＠∀＠）
＞作者をはじめ、この本を支持している若い読者層は自分の感情を素直に表明することを是として教育
を受けてきた世代である。その彼らに、なぜ嫌いなものを嫌いと言ってはいけないと強制するのか、本
の内容の否定の前に真摯に回答する義務が、われわれ大人世代、そして知識人諸氏にはまず、求め
られるのではあるまいか。多くのベストセラーがそうであるように、この本も、この本を嫌う人がまず、試
されているのだと言っていいだろう。
・・・いつ、誰が、どうやって、若い読者層に「嫌いなものを嫌いと言ってはいけないと強制」したのだろう？ これも根拠となる事例の示されていない話で、よくわかりません。別の書評で唐沢センセイは、この本を「新聞各紙が広告掲載拒否」したことを怒っておられたので、あるいはその件を指しているのかもしれません。しかし、そう言っているのは作者や版元だけです。どんな理由で広告掲載が実現しなかったのか、裏は取れているのでしょうか？ その点は私も知りたいところです。
・・・それにしても、古い人間のこしらえた捏造情報と民族差別意識が、若い漫画家に鵜呑みにされ、マンガという形で若年層に刷り込まれようとしている。そういう動きを「素直さ」と表現していいものかどうか。（＠∀＠）私にはわかりかねます。それがイイ大人の取るべき態度なのかどうか。
やはりここはトリビアーとして（まだ言うか）、『マンガ嫌韓流』のロジックが『つくる会』と２ちゃんねるニュース極東板のカクテルであることくらいは、新聞読者に啓蒙してもよかったのではなかったでしょうか。
・・・とはいえ、あえてこういう奇妙な書評を書くことによって、「朝日新聞紙面の政治的なバラエティを確保する役割を果たした」（もちろん『朝日』はそのつもりでしょうが）・・・ということであれば、なるほどオトナだ、と言えるのかもしれません。
・・・なかなか面白いので、昨日に引き続き、もう少し続けます。
