▼「集英社問題を考える地方議員の会」に対する集英社の回答
集英社問題を考える地方議員の会 代表 犬伏 秀一様
事務局長 松浦 芳子様
拝啓、錦秋の候、皆様にはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
週刊ヤングジャンプ第42、43号(九月十六、二十二日発売号)掲載の『国が燃える』(本宮ひろ志・作)に関する抗議を受け取りました。その内容については、弊社において今後然るべく出版の参考とさせていただく所存です。
因みに、対象となった作品について、弊社の考え方及び立場につき若干ご説明いたします。
まず、『国が燃える』という作品ですが、作者・本宮ひろ志の創作物であり、いわば完全なフィクションであるということを申し上げたいと存じます。そして、作品は是非とも全体として判断していただきたいと考えておりますし、最後までご覧になられた上で、再度の意見があれば承りたいと存じます。
作者は、本多勇介、松前洋平という主人公を中心に、昭和の激動期を舞台に、歴史の流れの中で己が信念をかけて必死に生き抜く人間の姿を描くというテーマを元に連載しているものです。歴史の流れが悲劇に向かっていく中で、主人公たちが「流されて生きていくのか、逆らって生きていくのか」を常に自問自答し生きていく物語です。このことは、現代を生きる我々においても普遍的なテーマと考え、連載を始めました。
ご理解いただきたいのは、作者が描こうとしているものは、そうした人間像です。ことさらに特定の個人を誹謗中傷したり、何かの思想を喧伝する意図などは微塵もないことをご理解ください。日本人の精神に害を注入しているというご意見を頂きましたが、作者は、まさしく歴史の流れの中で潔く生きた「日本人」を描かんとする志で制作しているものです。このことは、作者の過去の作品のありようを振り返っていただければ作者がいかに人間として、あるいは日本人としての誇りを描いてきたかは、ご理解いただける筈です。改めて申し上げますが、決して日本や日本人を貶めようなどという気持ちは一切ありません。もし、皆様がこうした印象を抱かれたとすれば、作者の意図が伝わらなかったということを意味し、非常に残念なことと感じていますし、それが伝わらないというのであれば、作品の完成度を高めていくことこそが使命と考えています。
以上が『国が燃える』の制作意図、制作姿勢であります。
フィクションは、『空想』といってしまえば言えないものではありません。ただ、歴史を舞台としてストーリーを組み立てた以上、史実を大幅に離れては成り立ち得ないと認識しております。今回の抗議の本質も、正にそこにあるものだと認識しています。編集部としては、今回の抗議を受けたことを参考に、作品中の脚注を誤解のないような記述に改めていく所存です。
指摘されました第43号掲載の描写について、偽写真の使用の指摘を受けました。当該写真が偽造か否かは、この作品が論じるべき性質のものではありませんが、この場面の作品において持つ意味などを、作者とも話し合い、当該個所については単行本にて訂正・削除し、本誌において読者に対し経緯の説明等適宜の処置をするよう対応いたします。
本宮ひろ志が『国が燃える』で描こうとするテーマは、作品が完結し、完成したときにおのずと明確になるものと考えています。そのために日々努力を重ね、創作しています。今後の作品の展開を、お読み頂きたく所望するとともに、改めて作品の全体像をもって、ご評価、ご批判頂ければ幸いです。
末筆ではございますが、皆様の一層のご健勝のほどを心からお祈り申し上げます。
敬具
平成十六年十月八日
東京都千代田区一ツ橋2−5−10
(株)集英社
週刊ヤングジャンプ編集部
編集長 田中 純