- 作者: 小松左京,一色登希彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/06/30
- メディア: コミック
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・・・東京が巨大震災で崩壊し、まさに「関東地獄地震」の様相を呈する中、生き残った人々は恐怖と疑心暗鬼から「デビルマン」状態で異端者の虐殺を開始する・・・
そんなすさまじい描写が続くマンガ版『日本沈没』(@ビッグコミックスピリッツ連載中)だが、
今週号では、そのような状況に対抗する人間の知恵として、ネット上で『D計画』というものが立ち上げられる。「(組織としての)実体のない理念と行動」「救援物資と人材を最大速度で被災現場へ」のように表現されるが、これはつまり、「震災現場へ直接行ける人間」と、「震災現場に行くことはできないが、行ける人間を食事の提供などで援助することができる人々」を、ネットの上で結びつけるシステムだ。
仕事などの都合で動けない人たちを「支援担当者」として参加させ、震災に対して何かをしたいという気持ちに「安心」を与える仕組みだ・・・といったことが書いてあるのが非常に興味深い。現にできることがいくらでもあるにかかわらず、人間が無力感に陥ることの問題が認識されている。
また「大量の指示待ちボランティア」を出さないように、人手が不足している地域に人員を振り分けるシステムについても言及がある。各地の「支援担当者」ネットユーザーは無線LANを開放し、日本全土でネットが事実上無料で利用できるようになる。
さらにすさまじいのが、「疑心暗鬼に陥った人々による虐殺行為の発生」を、このネットワークの構築者はすでに想定している、ということだ。その疑心暗鬼を解くためのノウハウについても・・・。
マンガ『日本沈没』東京壊滅編では、関東大震災における火災旋風や津波による大量死、あるいは朝鮮人や日本人への虐殺行為(軍や警察によるものを含む)などが、繰り返して「思い出され」る。また当時の記録が何度も引用される。
多くの人々が震災の悲惨さを忘却し、過去に学ぼうともしないまま東京壊滅に直面する一方、「過去を忘れていない人々」は、たんたんと準備し、実際に行動していく。このマンガは実にあなどれない。ある意味で原作を越えたとも言える。