前回 http://d.hatena.ne.jp/claw/20100319#p1 の続き。
前回↑で紹介したように、わたしは「ちきりん氏の理屈 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1003/16/news004.html にはインチキがある」と思っている。「ありえない前提にもとづき、ありえない論理展開で、ありえない相手を叩いている」と。そのことについてもう少し話をしておこう。
まず「ありえない前提」とは何かといえば、前回も指摘したように、昨今のさまざまな反貧困運動についての事実に基づかない中傷がなされ、それが議論の前提になっていることだ。
たとえば「派遣村」の活動を見てもわかることだが、反貧困運動の焦点というのは、「失業と同時に住居すら失うような不安定雇用ってどうよ」ということにあったはずだ。失業イコールホームレス化、社会や行政どころか家族からの援助からも切断されてしまい、自殺か犯罪か凍死するか、そういう人たちを「生きさせろ!」(by雨宮処凛)というのが焦点じゃなかったのか。だから「今の給料では結婚できないからどうにかしてくれ」とかいう主張は、必ずしも反貧困運動の中心的な焦点にはなっていないんじゃないのう?
・・・ていうかね(@∀@)工場の派遣労働者の中にも夫婦者のみなさんはけっこういらっしゃるんですよwww日研総業なんかはわざわざ夫婦用の寮まで確保してたりするしねwwwかつて派遣(というか偽装請負)の現場で働かされてた俺が言うんだからまちがいないwwww多分ちきりん氏はそんなの知らなかったんじゃないかナwwww
ところが「ちきりん」氏は、あたかも反貧困運動が主として「結婚できるだけの給料をくれ」と言い張ってるように印象づけようとする。そして以下のように話を展開する。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1003/16/news004.html
>翻って現在、若者たちは「こんな年収では結婚できない」と自らの不遇を訴えます。けれど、もし今の段階でそれに必要な額を払えば、彼らは数年後には「こんな給料では子育てできない」と言い出すでしょう。そして10年後には「こんな給料では家のローンが払えない」、60歳になれば「こんな退職金では親も介護できない」と言い出すことになります。
・・・どうです、このたくましい妄想力(@∀@) ありえない前提の上に築き上げた空中庭園、まさに砂上の楼閣w
前回も示したように、上記のでっちあげ理論は、現実に湯浅誠さんらが主張していること http://fukuokaunion.blog7.fc2.com/blog-entry-754.html とは大きく異なる。
・・・さらに奇妙なことがある。
ちきりん氏は、勤め人が「こんな年収では結婚できない」「こんな給料では子育てできない」「こんな給料では家のローンが払えない」「こんな退職金では親も介護できない」と主張することをあたかも「よろしくないこと」であるかのように描こうとしている。で、その「よろしくない理由」というのが「共産主義だから」というのだが、はたしてそうでしょうかねえええええええ(@∀@)
勤め人が自分たちの生活を向上させるために待遇の改善を要求するのは、少なくとも民主主義の存在する資本主義社会ではまったくもって当然の権利だと思うんだが、違ったんだろうか? http://blog.h-h.jp/investnews/2007/11/20/
・・・どうも「ちきりん」氏は、現実の資本主義諸国について独特の見解を持っておられるようだ。それは以下の記述からもわかる。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1003/16/news004.html
>資本主義では給料は成果に基づいて分配しますが、共産主義では成果とは関係なく生活費の必要性に応じて分配するのが原理原則です。
>しかし、その構図で今から戦うのは無理ではないでしょうか。1991年に解体したソビエト連邦を始め、共産主義体制は多くが崩壊してしまいました。また、社会主義的な政権の欧州の国でも、再分配機能は強化されていますが、下段の労働者の賃金制度は同一労働・同一賃金となっています。
>このグローバル経済の時代に、日本だけ「給料は成果に基づく額ではなく、生活必要額を払います。非正規雇用の人にも年功序列賃金制度を導入します」などという結論を勝ち取るのは不可能に思えます。
・・・アイタタタタタタタタタ(@∀@)これは痛いw
「ちきりん」氏は自分がなにを言っているのかわかってない。たぶんソースは会社の上司に飲み屋で聞かされた半可通の屁理屈じゃないかなと思う。(@∀@)まあその上司はマルクスの『ゴータ綱領批判』の誤読を又聞きしたんだろうが、そういう受け売りの理屈はいいから現実を見ようよw
「資本主義では給料は成果に基づいて分配」? ・・・はたしてそうでしょうかねえええええええ(@∀@)
たとえば世の中には所得格差60倍(コロンビア)とか40倍(ブラジル)とかいう国があるんだけども、これも「成果に基づく分配」なんでしょうかねw
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4650.html
それから、「ちきりん」氏はなぜか給料のことばかり問題にして、制度についての言及を必死で避けてる気がするんですけど、それも変な話でね。アメリカでは2001〜2003 年あたりの「ブッシュ減税」のおかげで、税額控除の拡充、最高税率の引き下げ、相続税の段階的撤廃、配当金に対する個人所得税の減税が進んだ。明らかに富裕層に対する大幅減税です。これにより百万ドル以上の所得階層は平均$93,500の減税を受けた。一方で所得階層最下位の世帯の平均減税額は・・・1ドル(@∀@)
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/18429303.pdf
「共産主義では成果とは関係なく生活費の必要性に応じて分配」?・・・はたしてそうでしょうかねえええええええ(@∀@)
別に資本主義でも勤め人の生活費の必要性とかは無視してないんじゃないですかね。実際、おもな資本主義国には最低賃金制度というものがある。というのも、資本主義を維持していくには労働者が安定して供給されなきゃならない。ところが給料をどんどん引き下げつづけると、いずれ労働者の健康が維持できなくなる、また労働者が結婚して子どもを作ることができなくなる(=新たな労働者が供給できなくなる)。もちろん社会全体の購買力低下も企業にとっては困るわけで、これは資本主義の危機じゃないんですかねえ・・・。
結局、「ちきりん」氏は、現実の資本主義社会を認識できてない人なんじゃないかと思えてきた(@∀@) 民主主義の存在する資本主義社会では、労働組合が労働者の生活向上を要求するのは法律で認められている。また、賃金水準は「生活費の必要性」を無視するわけにはいかない。氏が「社会主義」「共産主義」と決めつけてる多くのことがらは、資本主義社会でフツーに見かけることにすぎないのだ。
(つづく)
※このあと書こうと思ってること。
・現実の企業の「成果主義」システムは個人の「能力」を反映してるのかどうか。
・現実の日本の「年功序列」賃金制度は、日本の資本主義システムの要請として存在したのではなかったか。
・「ちきりん」氏は何かを「社会主義」「共産主義」と決め付けるとそこから思考能力が停止しちゃう癖があるけど、現実の資本主義国では「資本主義だからこそ国営化を促進する」とかいうことだってあるんだよw もうちょっと具体的に考えようよwww
・ニューズウィークで読んだおもしろいジョーク。「オバマの政策が社会主義だという奴がいる。だったらウォーレン・バフェットもカール・マルクスになれるだろうw」 自分の気に食わないものを「社会主義」よばわりする連中への皮肉。実際にはオバマの政策で儲けのチャンスを得る業界がある。
・学生時代に経済学説史の本を読んでおくことの重要性について。
・「住居の貧困」というキーワードで日本社会を見れば、「ちきりん」氏があおる「若年層vs中高年」という対立の構図はぜんぜんピントはずれなシロモノであると明らかになる。
・ていうか、そういう山野車輪http://news020.blog13.fc2.com/blog-entry-334.html みたいな世代間「ともぐい主義」を主張する人って、自分が中高年になった時のことなんか何も考えてないんだろうなァ・・・(@∀@)
・『エスター』的発想。対立すべきでない人々を対立させて破滅させていく恐怖少女?のサイコホラー映画。